福井県美浜町の西部に位置する水晶浜海水浴場は、若狭湾国定公園の美しいリアス海岸の一角を形成しています。水晶浜の最大の特徴は、微細な石英砂が堆積した純白のビーチと、海底まで見通せる類まれな水質透明度です。この透明度の高さこそが、遊泳者の危機意識を鈍らせる第一の罠となっています。
水が極めて澄んでいるため、水深の目測が狂いやすく、浅瀬が続いているように見えても数歩進むだけで急激に水深が2メートルから3メートル以上へと落ち込むブレイクライン(すり鉢状の段差)が存在します。足が届く場所からほんの一歩踏み外しただけで体制を崩し、パニックを起こして溺水に至るケースが頻発しています。
さらに警戒すべきは、岸に向かって打ち寄せた波が沖へと戻る際に発生する強い潮流、すなわち「離岸流(リップカレント)」です。水晶浜の砂浜は直線的に見えて海底の砂堆(サンドバー)が複雑にうねっており、押し寄せた海水が集中的に沖へと抜け出る流路が日替わりで形成されます。その流速は毎秒最大2メートルに達することもあり、オリンピック水泳選手でも逆らって泳ぎ切ることは不可能です。