午後3時24分、USエアウェイズ1549便(エアバスA320)はラガーディア空港の滑走路04から離陸しました。上昇中、高度約850メートル(2,800フィート)に達したわずか90秒後、カナダガンの巨大な群れが機体を包み込みます。両主翼のCFM56エンジンは鳥を吸い込み、爆発音とともに推力を完全に失いました。
商業旅客機が推進力を失った瞬間、機体は重量約66トンの巨大な滑空機へと変貌します。コクピットで操縦桿を握っていたサレンバーガー機長と、チェックリストの確認に奔走した副操縦士ジェフリー・スカイルズに残された時間は、わずか3分強でした。ニューヨークの過密空域で管制官は即座にラガーディア空港への引き返し、あるいはニュージャージー州のテターボロ空港への緊急着陸を提案します。しかし、高度と降下率を瞬時に計算したサレンバーガー機長が管制に返した言葉は極めて短く、揺るぎないものでした。
「間に合わない。ハドソン川に降りる(We can't do it. We're gonna be in the Hudson.)」