境内での飲食が禁止されているからといって、伏見稲荷の食文化そのものを諦める必要はまったくありません。神社の門前に広がる「伏見稲荷参道商店街」や裏参道には、数百年にわたり参拝者の胃袋を満たしてきた個性豊かな名物料理が揃っています。
その代表格が、商売繁盛と五穀豊穣の神であるお稲荷さんにちなんだ「いなり寿司」です。京都のいなり寿司は、麻の実やゴボウ、椎茸を混ぜ込んだ酢飯を三角形の油揚げで包み込むのが特徴で、一口ごとに上品な出汁と甘辛い旨味が広がります。また、甘辛く煮含めた大きな油揚げが乗る「いなりうどん」も外せません。出汁文化が息づく参道の食堂でいただく熱々の一杯は、お山巡り(稲荷山への参拝登山)で疲れた体を芯から温めてくれます。
さらに、香ばしいきな粉をたっぷりと纏った「きな粉団子」や、伏見稲荷ならではの独特な伝統食である「雀の丸焼き」も有名です。五穀を食い荒らす雀を退治し、豊作を祈願したことから始まったとされる雀の丸焼きは、頭から骨ごと香ばしく焼き上げられた唯一無二の滋味を誇ります。
現在、これらの名物を楽しむ際の新常識となっているのが「店先食」や「イートインスペース」の活用です。参道商店街の各店舗は、購入した商品をその場ですぐに味わえるベンチやカウンター席の整備を進めています。道行く人々の邪魔にならず、食べ終えた串や紙包みもその店で確実に引き取ってもらえるため、旅行者にとっても最も安全で快適なスタイルとなっています。